スプライフBlog
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こんにちは、久留米センターです。
ウイルスが流行したり、寒暖差が激しかったりと、体調を崩しやすい季節ですが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?
さて今回は、1月に就職したTさんのお話をぜひさせてください!
彼は10年間、引きこもり生活を送った経験があります。
担当させていただく中で、彼とは多くの面談を重ねました。本当にさまざまなことを話し、ともに涙し、笑い合いました。 私は、彼のこれまでの人生からとても多くのことを学びました。
今回は、彼が就職前に書き記してくれた文章も交えながら、お話ししたいと思います。
目次
⒈ Tさんの引きこもり時代
⒉ スプライフ通所のきっかけ
⒊ 通所の目的は就職じゃなかった?!
⒋ 通所の様子
⒌ 就職直前のTさんの感想
⒍ 担当の私が、今思うこと
⒎ 最後に
1. Tさんの引きこもり時代
大学に入学したTさんは学生生活で最初のつまずきがあり、卒業までがスムーズに進まず調子を崩します。専門学校に進むも軌道に乗らず、やがて引きこもり生活が始まります。
『私はスプライフに通所を始める前は約10年ひきこもりの生活を送っていた。社会に対する不安は大きく自分一人の力だけでは自立など不可能だと思えたし、仮に就職できたとしてもその先の人生を生き抜くことに絶望しか感じなかった。』
2. スプライフ通所のきっかけ
10年間、親御さんと通院中の病院スタッフとしか話をしてこなかったTさんは、ある日、勇気を出してスプライフに電話します。これは彼にとって、私たちが想像もできないくらいハードルが高いことであり、同時に大きな大きな一歩であったことを、私はのちに知りました。
『私がスプライフを知ったのは病院の待合室に置かれていた冊子からだった。就労移行支援という聞きなれない言葉だったが、電話だけでも、と思い切ってかけたことがはじまりだった。電話応対してくださったNさんは非常にゆっくりと丁寧に私の話を聴いてくれたことで安心できたことを今でも覚えている。(中略)初面談ではTさんとMさんがしっかりと丁寧に私の話に耳を傾けてくれた。ここまで親身に話を聴いてもらえたことは人生で初めての経験であり、信頼できると思え、すぐさま利用を決意した。』
緊張の中電話をかけ、事業所説明のための面談に来たことで彼の新たな人生が動き始めました。ちなみに今でもTさんは電話が苦手です。
当初、面談を担当した私の中では“就職までに時間がかかりそうだな”というのが正直な感想でした。
3. 通所の目的は就職じゃなかった?!
こうして通所を始めたTさん。
しかし、就職だけが彼の通所の目的ではありませんでした。
『私が就労移行支援所を利用することにしたのは、なにも就職だけを目標にしたからではない。確かに働きたいと思っていたが、もっとも重要なことは人生をどう生き抜いていくかという課題だった。この難題をクリアしない限り、私は就職できても生きていけないという自覚があった。(中略)スプライフは私のような就職以外の目標にもしっかりとした支援と理解を示してくれた。』
10年間の引きこもりを経験したTさんにとって就職は遠く先の目標であり、まずは社会に出られるか、生きていけるかという不安の方が大きな壁となっていました。
通所後に繰り返した面談の大半は、この悩みに関するものだったと思います。初対面で私が感じた“難しさ”はここから来たものでした。
それでもTさんは年齢的な焦りを感じながらも「もうここで就職したい」という強い思いを最後まで失うことなく歩みを進めます。
4. 通所の様子
人と関わることへの不安が強いTさんは、コミュニケーション訓練や心理系の訓練に前向きに参加されました。
もともと人との関わり自体は好きだったのですが、“コミュニケーションをとる“となったら別の話。どのような距離感で、どういった言葉選びで人と関わるのが自分にとって楽でいられるか、共に試行錯誤しました。
また、学生時代のアルバイト以外の職歴がないため、今の自分に何ができるのか、何が向いているのかが全くわからない状態でした。加えて人と協同しながらの作業がいいのか、一人作業がいいのかも見当がつかない状態でした。そのため「軽作業訓練」で適性を把握していくことにしました。
『通所を開始してしばらくは毎日が楽しくて仕方がなかった。10年他人とほとんど接してこなかった私にとって利用者との会話はすべてが輝いてみえ、同時に人生の先輩のように思え(多くは私の方が年上ではあったが)、尊敬の対象だった。可能であれば、この感覚は一生忘れずに大事にしていきたいと思う。』
私の想像には反して、かなり順調なスタートを切ったTさんでしたが、一時期調子を崩します。表情に覇気がなく、訓練にも集中ができていない様子。この時期の面談では「虚無感」という言葉が頻繁に出ていました。
『順調のように思えたスプライフでの生活も次第に陰りが見えてきた。その原因は「虚無感」だった。「なにをしても虚しく感じる感覚」が毎日のように感じられ、精神的にも不安定な時期を経験した。当時はこの虚無感の原因が分からなかったが、今振り返ってみると「人生への逃避」だったように思う。ようやく逃げるのをやめ前を向けるようになったのは通所を開始して10か月が経ったころだった。この時期から訓練に対し意欲的に取り組むようになった。とくに軽作業は仕事のように真剣に取り組んだ。意欲的に訓練をした結果、毎日が充実し、虚無感の存在はまったくといっていいほど消失した。』
Tさんに限らず、多くの利用者様は似たような時期を迎えます。このような時期をうまく乗り越える力も、今後社会に出る際に必要なものだと思います。Tさんとはこの時期の面談が最も長く、回数も多かったです。
何がどんなふうに苦しいのか辛いのか、彼が私に伝えようと一生懸命に言葉を選びながら話す声に耳を傾けても、彼の辛さのほんのひとつまみしか分からない自分を残念に思いましたし、どのような声をかけたらいいのか本当に見当もつかないという自分の無力さを毎回感じ、お互いに涙をする面談を重ねました。今でもその時の彼の表情などを思い出すと胸が締め付けられます。ただ本当につらく真っ暗な中にありながら、それでも前に進もうともがいている彼の様子をみて、私も改めて全力で支援をしようと思えたのです。私自身、とても大きく、そして多くのことを学ばせてもらった時期でした。
その後、この辛くしんどい時期を乗り越えたTさんは本格的な就職活動に入ります。30代後半、人生で初めての就職活動です。
ブランクが長いこと、職歴がないことが不安感を増幅させていたため、社会になじむためにも職場体験実習を多く取り入れ、様々な企業、多種多様な職種を経験しました。実習後の企業からの評価に一喜一憂しましたが、徐々に自信をつけていき、職業の方向性も絞られてきました。
3社目の実習先は障害のことはもちろん、引きこもりのことも全て理解した上で受け入れてくれ、Tさんも「ここで働きたい。ここでならやっていけそう。」という気持ちがはっきりしてきました。
そして面接を受け、見事採用を掴み取りました!
5. 就職直前のTさんの感想
『虚無感を克服して前を向くことができたのはスプライフの利用者の存在が大きいと思う。みんな一人一人が問題を抱えながらも必死に前を向いて人生を歩んでいる姿は私を鼓舞してくれた。こうした環境は今後の人生でもう2度と経験できないと思っている。また、担当のTさんをはじめ職員さんには大変お世話になった。私が安心して毎日を過ごせたのもすべて職員さんに任せていたからだ。間違いがあれば指摘して正してくれるし、悩みがあれば話を聴いてくれる。こんなにも恵まれた環境が世の中にいったいどのくらいあるのだろうか。』
卒業する際、Tさんは上記のように感想を残してくれました。
6. 担当の私が、今思うこと
「ようやくここまで来ましたね。」
Tさんが就職内定の報告を主治医の先生にした際にかけられた言葉です。本当にすべてが詰まった、私には良い意味で非常に重たい言葉です。
これをTさんから聞いた瞬間に通所していた1年7か月のことが思い返され目頭が熱くなり、Tさんに「本当に良かったです。」とうつむいて返すのがやっとでした。
Tさんとの数多くの面談で彼から10年の引きこもりを後悔する言葉を何度も聞きました。そして「もっと早く通所したかった」と何度も口にしていました。
気持ちはわかります。でももう仕方ないのです。過ぎたものは戻せない。今からをどう進むかを考えることが大事です。ただ引きこもっていた彼にとっては一人でその作業をするのは果てしなく難しかったはずです。
Tさんには今回人生で初めて「支援者」が付いたのですが、その支援者が少し先に光を灯しながら歩む道を試行錯誤しながら一緒に進んでいく。その過程が不可欠だったのだと思います。その中で知らないうちに自信もついていくのです。
私は引きこもっていた時間が、Tさんの人生にとっては必要な期間だったのではないかとも思うのです。10年が長いか短いかはわかりません。でも引きこもらざるを得ない状況にあったことは事実です。それを否定はしませんし、Tさんにとってその過程があったからこその『今』なのです。私はそう信じたいです。
引きこもりの期間を決して悲観しないよう何度も彼に言いました。物事をどのように捉えるか、そしてこれからをどう生きていくか、それが大事だということを何度も何度も伝えました。
『通所以前の私とは比較にならないほど人生に対し前向きになれ、生きる自信がついた。ここまで成長できたのは、支援して下さった多くの方々と、仲良くしてくれた利用者のおかげだ。(中略) スプライフで訓練した日々は一生忘れない。今後も時折、思い出しては自分の励みにして人生を前向きに生きていこうと思う。』
こちらの文章を見た時、私の伝えたかったことがちゃんと彼に伝わっているのだとやっと確信しました。Tさんとの最後の面談では「バネのようにしなやかに、生き抜いて」と伝えました。
これから彼が生きていく社会はシビアで厳しいところです。でも通所中に、困難にぶち当たった時の回避法や、やり過ごす術を学んだ彼はきっとうまく乗り越えるはずです。
これからも時々職場にお邪魔して、背中を押したり、悩みに耳を傾けつつ、職場に定着できるよう、そして社会に順応できるようサポートしていきます。安心してね、Tさん!
7. 最後に
私が引きこもりの方を担当するのはTさんで二人目でした。
しかし、お二人は同じ引きこもりの状況であってもそれぞれ違った障害で、就職までの進み方も全く違ったものでした。
現在通所中の利用者様も、例え同じ障害であっても困りごとや課題は全く違うところにあります。もちろん成育歴や性格も関わっている場合があります。
どこに課題があるのか、つまずく原因は何か、それはその方にとってどれくらい高いハードルなのか、どのようにしたら改善されるのか、負担でないのかなど、久留米センターでは訓練の中はもちろん、各担当職員が丁寧に話をするなかでそのような部分を一緒に整理していきます。
今、就職に関して少しでも興味がある方は一度久留米センターに電話をしてみてください。
はじめの一歩を踏み出すのは「あなた」です。
勇気がいることだと思いますが、そこからすべてが動き始めるのです。私たちはその貴重な第一歩を必ず未来に繋げます。私たちが全力でサポートします。
自分の人生を動かすのは「あなた」です。
ご連絡をお待ちしています。
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